2015年6月22日月曜日

それでも、次の駅へ向かう

ボクは暗い気持ちになっていた。

お得意先だったバーの営業開始時間に行っても人がいない。しばらく経っても誰も来ない。それが2回続いたので、ネットで調べてみた。そうしたら何と、そのバーテンダーさんは3ヶ月前に亡くなっていたのだ。ボクにとっては初めての訪問で、これからよろしくお願いします、と挨拶をするはずだった。会ったことのない人だが、自分が愛するビールを扱ってくれていた、大切な人だ。若かったのだと思うけれど、脳溢血で急だったらしい。オーナーさんは別にいらっしゃるみたいで、お店はしばらく休業ということらしい。

それは3ヶ月前のことだ。ボクがこの仕事に戻ってくるより前のことだ。それでも、やはり重い気持ちになる。

自分ももう50手前だから、そういうことはいつも隣り合わせだと思っている。だから、残された人生を意味のあるものにするために、こういうことも生きる原動力にする気持ちの切り替え方を身につけてきた。


次の得意先へ足を向ける。

電車に乗り、久しぶりに降り立つ駅。

iPhoneのgoogle Mapをにらみながら路地に入る。

見つけた。ここも初めての得意先。


ミートソース専門店の素晴らしく美味しそうなパスタ。和牛スネ肉のミートソース。


愛するビールとともにあっという間に完食。


美味しいものを前にすると、やはり幸せな気分になる。

生命を食して、幸せな気分になっている。


さて、明日もちゃんと生きようじゃないか。


2015年6月16日火曜日

スタウトに始まりスタウトに終わる

食事をいただきながら飲むお酒は、軽いものから入るというのが、一般的なんだろうと思う。ビールならピルスナーとか、ワインならスパークリングなんかが、食欲を増進させるかもしれない。

しかし、最初の一杯から食事と合わせるのであれば、おいしさを洗い流すようなものではなく、おいしさにおいしさを重ね合わせていく、という飲みものが良いと思う。


一般的にはね、スタウトビールを最初に持ってくるなんて、と思うでしょうが、こういう状況で、フレッシュなスタウトビールというものを飲んでみればわかってもらえる。


こんな感じの料理にも、特に魚介類には素晴らしく合う。比べてみると、ピルスナーなどの下面発酵ビールは魚介類と合わせると硫黄っぽい香りが気になるかもしれない。


もちろん、ワインもいただきます。(写真には出ないけど。)


こんな料理にも、スタウトビールを合わせたくなるのは、知っているから。


嘘だと思うなら、銀座のLINK DININGへ行ってみてください。(ワインも飲んでね。)



普通は、これで十分満足なのだけれども、銀座のここまで来たら、寄るよね、煙事

とんでもなくうまい豚肉を使ったブタ玉子丼には燻製醤油を使ったソースがかかっている。


そして、それに合わせるのが、またスタウトビール。

ガージェリー・スタウト。


 スタウトの懐は本当に深いのである。

2015年6月9日火曜日

ブランドを背負って、雨の中を行く

数日前に、とある外国から来日中の方と渋谷のカフェで待ち合わせたのだけど、桜ヶ丘の上の方のちょっとわかりにくい場所だったからか、1時間以上待ちぼうけ。

その間、最近話題になったビールを飲んでみた。このカフェを経営する会社がサンクトガーレン社と共同で開発したビールとのことで、原材料としてグレープフルーツとマカを使用しているのが大きな特徴。グレープフルーツ由来か、マカ由来か、ほろ苦い後味が小気味良い。

Shibuya Beer

最近流行りの「クラフトビール」と「エナジードリンク」を合わせたようなコンセプトと味わい。狙ってますね、っていう感じかな。

一時のイベントで終わってしまうのか、永続するブランドとして育てるのか、ブランドを背負って立つのは誰なのか、そこがよくわからないけれど。渋谷生まれの渋谷育ち(場合によって原宿生まれの原宿育ちとも言う)のボクとしては、「渋谷」をブランド名とした以上は、責任を持って育ててもらいたいと思う。


そんなことを考えながら、仕事へ戻る。

雨が降り始める。


20年以上前、ボクが大手ビール会社で営業の仕事を学び始めた頃、大先輩から教わったことの中で印象深いのは、天気の悪い日こそ飲みに出ろ、っていう一種の経験則のようなこと。簡単に想像がつくと思うのだけど、天気が悪ければみんな飲みに出ない。つまり飲み屋は暇なことが多い。そんなときに飲みに行くことで、喜こんでもらえるし、お店の人とコミュニケーションも取りやすい。あの頃はまだバブルの名残もあり、営業マンは事務所の女性を引き連れて、傘をさしてみんなで街に繰り出したっけか。

で、今のボクはといえば、そんな景気の良い飲み方はできないものの、あの経験則に習い、雨の中、いつも以上に気持ちを入れて回るわけだ。


これを何年やっただろう? これをあと何年やるだろう?


それができるのは、なにか使命感があるからだ。



「ブランド」を背負って、

 ひとり、


おニューのカバンを気遣いながら、

ズボンの裾をべっちょり濡らして、


夜の街を行く。


なぜかキリンちゃんがいる