2015年9月30日水曜日

秋の夜長にひとり想う


大学を卒業してから26年間勤めたキリンビールを退職して今日でちょうど半年。つまり、ビアスタイル21社に復帰してちょうど半年。この6ヶ月はどうだったろう。正直言うとあっけないほど自然に過ぎた感じがしている。それはそもそも自分が立ち上げに関わった会社だから?この会社を一旦離れた8年前と事務所が全く同じだったから?

とは言っても、8年前のビアスタイル21社はまだキリンの社内ベンチャーから発生した完全子会社だったわけで、当時はまだ大企業に所属していながらの、失敗しても戻る場所はどこかしらあるという、ある意味守られた立場だった。しかし今回は違う。ビアスタイル21社はキリンの資本を離れていて、GARGERYの行方と自分の行方は全くリンクしている。

リスク?そういう言い方もあるかもしれないが、それは全く気にならない。まあ、あの時に比べれば歳をとって、残された時間が減っているという理由だけでも、人生の先行きはある意味見通しやすくなっていると言える。ただそういうことではなく、多分、価値観が変わったんだろうと思う。30代の頃はビジネスマンとしての成功だとか、社内での出世だとか、そういうことが人生の成功なんだという、必ずしもそうではないということはわかっていても、ある程度は囚われていた。

今は確実に違う。この時間に何をするか、好きなことをしているか。誰と一緒にいるか、一緒にいたい人といるのか。自分のいたい場所に、自分の意志でいるのか。自分の手で、足で、言葉で、世界と接しているか。そういうことこそ大事で、喜びを感じているから、リスクを取った、なんていう感覚は全くないわけ。

そんな風に8年前と何か根本的なものが変わった自分がいるわけだけど、全く変わらないものがある。

それは、自分が生みだしたブランド、GARGERYへの愛情。

考えてみれば、8年前にビアスタイル21社を離れ、キリンビールで全然別の仕事をしていた時も、GARGERYがどうなっているか常に気になっていたし、街で見かければ自分の子供のように誇らしく、愛おしく思っていた。

だから、戻ってきて何の違和感もないんだろう。

どっしり、ボクの心の中にGARGERYが座っている。


これは死ぬまで変わらんだろうね。

2015年9月22日火曜日

グラスは覚えている

大阪出張で3泊みっちり働いた(飲んだ)帰り、虎ノ門へ寄った。2軒のお得意先へ行くためだ。

一軒はホテルのバー。
誰もが知るこのホテルのバーで、ガージェリーはもう12年。そう、ボクらがガージェリーを始めてまだ間もない頃、つまりこのビールを知る人がまだ全くいない時期に、この由緒ある場所にリュトンが置かれることとなった。

最近、ホテルの本館が建て替えのために閉館する関係で2ヶ月ほどこのバーもお休みだったが、今月から元気に再開。様子見にうかがったわけ。


ガージェリー・エステラが注がれたリュトンを受け止めているこの台座、ひと目で12年前のものだとわかる。側面に"GARGERY"とプリントされているのは当時のものだけだから。プリントは早々にやめて、台座の底面にブランドマークのゴブヌ神のイラストを刻むことにしたから。

大事に大事にこの場所で扱われてきたということだ。ビールが美味しい。

さて、次に向かったのは、虎ノ門ヒルズのダイニングバー。ここでは今月からガージェリー23の扱いを始めてもらった。

今度は台座ではなくリュトングラスに注目。本来あるはずのグラス側面のルーン文字が無い。これも何年も前にとある事情で作り、六本木の国際的に有名なホテルのバーで使用されていたもの。だけど、ここは虎ノ門ヒルズ。


六本木のホテルのメインバーでガージェリーが飲めたときがあった。だけどそれは極めてビール業界らしい事情で大手のビールに取って替わられ、このグラスは小金井の事務所で眠ることになった。

それから数年経過した今、当時その六本木のホテルで働いていたバーテンダーと虎ノ門で再会。ガージェリーをあらためて案内すると、是非あのグラスを使いたいということで、この場所にこのリュトンを持ち込むことになった。あの頃、「飲食店でしか飲めないプレミアムビールをオリジナルグラスで」と誇らしくお客さんにお奨めしていただいていた気持ちが蘇る。

グラスに注がれていたのは、きっとビールだけではなかった。

2015年9月1日火曜日

表参道ヒルズができる頃、飛び込まれる側のことを考えた

さて、久々にアップすると思ったら急に文字多め。しかも10年近く前の投稿のほぼペースト。というのも、ガージェリーに復帰してバリバリ営業もやっている。そんな中で感じることはやはり一緒。文章は少し稚拙だけど、再掲したい。(一部◼︎で伏字にしてあるのは、現在はガージェリーの取扱いがなくなったお店)

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20060125
暗渠を踏みしめ考えた

昨日の夕方、恵比寿のカフェレストランでお茶をしてお店の人に本部の担当者の連絡先を聞いた。というのも恵比寿、青山近辺で気になるお店を何店か経営しているところだから。
こういう風にお客さんとして来ていると追い返すわけにはいかないので、大抵は何らか教えてくれる。まあ、これも稚拙ではあるが営業手法のひとつと言えるだろう。

今朝、その本部に電話してドリンク担当の方にアポイントを取った。応対の感じはなかなか良い。明日プレゼンさせていただくことになった。

午後、その会社の経営するお店の中で、まだ見ていないところを見ておこうと、渋谷「◼︎◼︎◼︎」にPOPを届けた後、原宿、青山に足を運んだ。途中、それとは関係なく目に止まったイタリアン。このお店、かなり前からやってる。学生時代に誰かとランチを食べに来たような気もする。長く続いているだけに、ちょっと興味あり。飛び込んでみた。

休憩中の男性スタッフの一人が気だるそうに出てきて、一応こちらの話を聞いてくれたが、ビールということがわかると「ビール?ビールはダメですね。決まってますから。」と、もうほとんど聞く耳無しという感じ。とりあえず渡した資料もボクが出て行くときに投げ捨てるようにレジカウンターの上に置いていた。

ところで、渋谷川の暗渠の上を歩きながらボクはちょっと考えた。エスキス表参道とキディランドの間から渋谷方面に伸びている、ちょっと低くなった遊歩道だ。表参道を渡ると反対側には交番があって、その横から出てる、いわゆる裏原エリアの遊歩道も同じ渋谷川の暗渠。この入口、つまり交番の後ろにラルフローレンのでかい建物ができている。211日オープンの表参道ヒルズと一緒に開店するつもりだろうか?表参道は世界のブランド通りになっちゃったなぁ。



話がそれた。その暗渠を歩きながら考えたのさ。飛び込み営業に対するお店の姿勢について。

外回りの営業をしているといろいろな人に会う。その“いろいろ”を分類しようとすると切り口はいろいろあるけど、初対面の相手に営業する場合、重要なポイントとして相手に好奇心があるかないかがある。もちろん営業する側の、初対面のシチュエーションづくり、印象作りといった営業技術に左右される要素があることは間違いないが、飛び込みをすると反応は2つに分かれる。

1つは「断るのが面倒。時間の無駄。関わりあいたくない。」
もうひとつは「なになに?なんか面白いものなの?」

たいていは前者だ。ただしボクの仕事の場合は前者であっても、もともとビールという安心感のある商品である上に、ビールとしてはインパクトがある商品なので興味を持っていただける可能性が結構高い。これが金融商品とか、エステとか、価格が高く、内容が難しいものだと抵抗が大きい。しかしそれでも、今回のようにほぼ追い返されるようなことは日常茶飯事。

飛び込んだタイミングの問題はとりあえず別にして、思い切って単純化して言うと、とにかく「セールスお断り。」ということ。誰にでもそれはある。怪しい金融商品の勧誘電話。強引な訪問営業員・・・・迷惑だ。会社の事務所で忙しいときに、カード会社から保険の勧誘の電話。もうそのカードを解約してやろうかとも思ったりする。これはセールスを受ける側のニーズとセールスする側の商品のギャップが大きいからだ。

しかし、自動車メーカーにタイヤや精密部品、パン屋に小麦粉、本屋に本棚、ライブハウスに音響設備、飲食店にアルコール飲料・・・。これは、ちょっと違う。ギャップは無い。ギャップがあるとしたら商談が具体的になってからの話。自分の会社やお店を少しでも良くしようという気持ちがあれば、とりあえず話を聞かない理由は無いはず。あるとすれば「忙しい。」ってこと。たいていは定常業務に追われているということ。

そこで、後者の話になる。
今までに印象に残ったセリフが2つ。

一つめは先日の記事に書いた。代々木の有名フレンチ「レストランキノシタ」。グルメに興味のある人で知らない人はいないのではないかというシェフのお店だ。見た目は丸坊主でちょっと怖そう。
あらかじめ“G”資料を送っておいて電話をしてみた。(これは営業技術かな。)
すると・・・

「美味しいものなら飲んでみたいです。」

うーん、これが基本だよな。と唸りたくなるセリフ。フレンチだけに「ビールは興味ありません。」という答えも覚悟していたが「美味しいものなら・・・」って、すごく力強い響き。今ではGエステラをハウスビールとして取り扱っていただいている。

二つ目は、青山学院横のイタリアン「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎」。
こちらはアポイント無しでお店に入って行った。お店の入り口が狭く、地下への階段を下りていかないといけないので、入るのに勇気が必要。階段を下りると、運良くドリンクの担当の方が応対してくれた。「まあ、座ってください。」とフレンドリーで、こちらの話をゆっくり聞いていただいた。で、今はお取扱いいただいているのだが、この時の先方のセリフが面白かった。

「うちは飛び込みの営業しか受けないんですよ。入りにくいでしょ。それでも入ってきてくれる熱意のある営業さんでないと。」

電話で売り込みをしてくる営業には「とにかくお店へ来てくださいよ。」と言っているそうだ。

この方たちに言えることは、好奇心があるということ。自分の仕事をもっと良くするために、他人の話を聞いて新しい情報を取り入れることを大切にしている。自分の店に何か売り込もうとしているということは、相手は自分の店に興味を持っているということ。(そうでもない営業もあるかもしれないけど。)

定常業務に追われて忙しいから、どんなセールスも十羽ひとからげにして追い返すのでは自分の成長は怪しくなる。

セールスの話は取りあえず聞いてみましょう。←少々都合の良い結論ではある

(以上2006年01月26日の投稿)
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なんてことを書いたのだけれど、歳を重ねた今あらためて考えてみても、これは、たしかに人が成長するひとつのポイントなんだろうと思う。自分は成長の機会を逃していないか、振り返ってみないと。