2017年12月4日月曜日

その場所で待っている

ああ、12月、しかも2017年という、少し前まではすごい未来のことに思っていたブレードランナーのような西暦。どんな未来に来てしまったのか。
などと感慨に耽りがちなこの12月は、ガージェリーにとって少し意味がある。最初のビール「ガージェリー・スタウト」が初出荷されたのが2002年12月なので、ちょうど15周年になる。
それまでこの世に存在しなかった「GARGERY」という読み方もよくわからない銘柄で、海のものとも山のものともわからない不思議なデザインのグラスに注がれた黒ビール。これだけで一つの会社を作り、青山にコンセプトショップまで出してしまった。



当時は大手ビール会社の社内ベンチャーとしてのスタート。今でこそ大手メーカー各社もそれぞれの形でクラフトビールカテゴリーに参入しているけれども、当時が今と大きく違ったのは「クラフトビールブーム」の流れは全くなかったし、「地ビールブーム」はすでに過去のものになっていた時期だった。そんな時によくあんなことをやったものだと思う。

今クラフトビールシーンを盛り上げている、中小、そして大手の各造り手とガージェリーが異なるのは、ブランドコンセプトへの重心の置き方、そしてその在り方だと思っている。造り手の想いが乗った多様なビールを楽しむ文化の創出、というのが、今のクラフトビールブームを動かしてる意志のようなものだと理解している。だから、ブルワーが誰か、いかに個性があるビールか、というのが前面に出ることが多い。
一方、ガージェリーはというと、ビアスタイル21「事業」立ち上げの意志として、そういう要素はあったのだが、「ブランド」としての立ち位置はぐっと飲み手側になる。飲み手が大切にしている自分の時間に、自分に戻るためのパートナーでありたい。いつもそこにいて飲み手を待っていたい。そういうブランドでありたい。そのためには、ワイワイガヤガヤゴクゴクというシーンで飲まれるビールではなく、ビールというよりは、新しいアルコール飲料として見てもらいたい。そういう想いを持って創り出したのがガージェリーなのだ。



そのコンセプトを大事にしながら15年間、ブランドを広める活動をしてきた。結果として、各社のクラフトビールが主に売られている場所と、ガージェリーが売られている場所は大きく異なっている。実際、クラフトビールの品揃えを売りにしているビアバーのようなお店でガージェリーを見ることはほとんどないし、ガージェリーをサーブしているお店でクラフトビール中心のお店は極めて少ない。(そんな中で、昔からガージェリーのコンセプトに共感してくれて、ずっと定番にしてくれているビアバーがあるのは嬉しいことだ。)大手の主力ブランドを除いて、ガージェリーと同じお店に置いてあることが一番多いビールの銘柄は何かというと、ちゃんと数えた訳ではないが、ハートランドかもしれない。同じ大手ビールメーカー内でガージェリーよりもずっと前に生まれたビールだが、ブランドとしての在り方がよく似ていると思う。
GARGERYのブランド名の由来をあらためて紹介しておく。チャールズ・ディケンズの小説『大いなる遺産』において、主人公の少年ピップは通常あり得ない大きな環境の変化を経験し、その中で心が揺れ動くわけだが、そんなピップをずっと変わらずに支え続けたのは、彼の育ての親であり一番の友人だった鍛冶屋のジョー・ガージェリー(Joe Gargery)だった。



お酒は様々なシーンで飲まれるけれど、その中でも、飲み手が自分と向き合ったり、大切な人と過ごすときに選ばれるビールであって欲しい、そんな思いを持って、この真面目で優しい鍛冶屋の名前を取り、GARGERYというブランド名にしたのだ。
いつも、ここに立ち返らないといけない。旧友のように変わらず、“その場所”で待っていてくれる。そういうブランドなんだと。そのコンセプトに共感してもらえるお店と共に。
12月、飲む機会が増えると思いますが、大切な友人との大切な時間、その場所、素敵な飲食店で、是非ガージェリーを(^ ^)!