2018年1月5日金曜日

変わらないために、変える、2018


2018年になっちゃった。
すごい未来感。でも、なんとなくしっくりくる数字ではある。

キリンビールを退職してビアスタイル21に復帰し今春で3年になる。ビアスタイル21を7年半離れての復帰だったけれど、もともと自分で立ち上げた事業なのでごく自然に馴染むことができたし、3年経つと、もはや15年ずっとやってきたような気分にもなる。(初めてこのブログを読む方はガージェリー公式ブログのこの投稿をご覧いただくと上記の意味がわかりやすくなると思います。)

なので、15年間を感慨深く振り返るわけだが(笑)、事業スタート当時は、ガージェリー・スタウトとガージェリー・エステラ、たった2種類の樽詰ビールだけ、しかも展開エリアを東京だけに絞った飲食店限定のプレミアムビールという位置付けで展開していた。デフレの真っ只中で、ビール市場もいわゆる節税ビールとしての発泡酒が全盛の中、当時の感覚では“超”をつけてもよいくらいのプレミアム価格だったし、ビールといえば大手ブランドが絶対的な存在だったので、飲食店への案内はなかなかハードルが高かった



そして今、あの頃からビール市場もずいぶん変わった。大手ビール各社はプレミアムビールに力を入れ、10年前は下火だった“地ビール”は“クラフトビール”として一つのムーブメントになり、大手のマーケティング戦略や商品開発、さらには資本関係にも影響を与えている。ガージェリーは、ブランドイメージを“地ビール”というカテゴリーから意識して距離を置いてきたけれど、最近の“プレミアムビール”、“クラフトビール”ということになると、一般的な感覚ではガージェリーもそのカテゴリーに分類されるだろうし、そういうカテゴリーを認識している飲食店が増えたので案内しやすくなったことは確かだ。

最近、飲食店の方やお客様と話していると、「味の評判もいいし、デザインもカッコ良い、せっかくのクラフトビールブームなんだし、問屋さんや酒屋さんに卸したり、ネット通販なんかで販路を広げれば一気に倍々で売れるんじゃない?」「限定樽詰ビールは出さないの?」「次の新商品はいつ出すの?」そんなことを聞かれることが多くなった。

そもそも、そうする余裕もないのだが、正直なところ、やることが得策だとも思っていない。ビジネスとして売上は上げていかなければならない。利益を上げれなければ成り立たない。それが前提だけど、短期的に大きな売上や利益を上げることよりも大事なのは「続けられること」と「存在価値を高めること」。言い換えれば「ブランドをつくること」だと思っている。
「ブランドをつくる」、それはつまり、ストーリーをつくりたい、それを誰かと共有したい、そしてそれを受け継いでいきたい。そういうことだと思っている。



2002年に、ガージェリーの商品開発段階で決めたことは、物性的には醸造所を出てから飲む瞬間までのコンディションということに絶対的に軸足を置き、情緒的には、人々が外飲みという特別な意味を持つシチュエーションで、その時間を豊かにして、願わくば、こころまでを満たしたい、そういうビールを提供する、ということだった。そしてそのためには、お客様がビールを飲むその瞬間に立ち会う、飲食店の人たちと手を携えていかなければいけない。それをどこまでも真摯に実践して行く。

それがガージェリーのストーリーであり、ガージェリーの存在価値なのだ。15年経った今も変わっていない。

それからこの「GARGERY(ガージェリー)」というブランド名。イギリスの作家、チャールズ・ディケンズの小説『大いなる遺産』に登場する心優しい鍛冶職人の名前で、主人公ピップが、予期せず手にした大きな資産のために心惑う人生を送る中、いつも変わらぬ大きな愛情を持って接したのがJoe Gargery(ジョー・ガージェリー)。その名前をブランド名にしたのは、飲み手の人生にいつも変わらず優しく寄り添うようなビールにしたいと思ったからだ。
いつもそこに行けば会える、変わらない親友のようなビール。
それがガージェリー。質問への答えだ。



やるべきことの優先順位ははっきりしている。ガージェリーを愛していただける飲食店を探すことを愚直に続ける。そして共感していただいた人たちガージェリーを語っていただく。それが一番のブランドづくり。

ただ、そうは言っても、お客様やパートナーとの信頼関係をつくることなので時間がかかる。ブランドをつくるには、腰をかがめて我慢する時間が必要。いたずらに量を求めてあれこれ背伸びをすると、ブランドではなく単なる”商品群”ができてしまう。あとは前年比とのいたちごっこ。そうしてダメになった商品を数知れず見てきた。

幸い、今のところガージェリーの状況は悪くない。15年続いた。まだ15年とも言えるが。日本のビールとしては他に類を見ないブランドになってきていると思う。ガージェリーと同じような売れ方をしているビールは、クラフトビール、大手ビール、どこを探しても、無いと思う。



なんて、自慢げに書いてしまったが、実のところバックヤードには大きな課題がある。50代のおっさん二人だけで会社のオペレーションを回している。二人のうち一人に何かあるとたちまち立ち行かなるなるような状態では、そりゃまずい。1,100店の取扱店を二人でカバーしてます!などと自慢げに言っている場合ではない。

そろそろ次の世代に引き継いで行く準備が必要だ。それは、ただ若い人を入れる、という単純なことではない。次の15年も変わらず、飲み手に寄り添うビールでありたい。そのためには変えることは変えないといけない。つまり、変えないために、変わることが必要になってきている。

2018年はそういうことに手をつける初年度だと思っている。

さ、新しいスタートだ!