2015年12月13日日曜日

ブランドをつくること、存在している意味を確認すること

2002年の事業開始以来、ガージェリーが発売したビールは、樽が2種類、瓶は3種類、合計5種類だけ。しかも、飲食店だけにしか販売しない。飲んでもらうには、飲食店へ行っていただくしかない。

樽はガージェリー・スタウトとガージェリー・エステラ。
スタウトは100日以上、エステラは60日以上かけて発酵・熟成させ、飲食店から注文をいただいた分だけ樽に詰め、翌日には冷蔵便でお店に届ける。


瓶はガージェリー23(トゥースリー)BLACK、Xale(エックスエール)、Wheatの3種。
主発酵が終わった段階で瓶詰し、60日以上の冷蔵保管の後に出荷。1ヶ月、2ヶ月、そして1年、2年と時を重ねるにつれ刻々と変化する香味を楽しめる瓶内熟成ビール。


「味の評判もいいし、デザインもカッコ良い、せっかくのクラフトビールブームなんだし、問屋さんや酒屋さんに卸したり、ネット通販なんかで販路を広げれば一気に倍々で売れるんじゃないの?」「スタウトとエステラ以外の限定樽詰ビールとかは出さないの?」

そんなことを聞かれることが多い。

まあ、そもそもそうする余裕もないのだが、やることが得策だとも思っていない。ビジネスとして売上は上げていかなければならない。利益を上げれなければ成り立たない。それが前提だけれども、短期的に大きな売上や利益を上げることよりも大事なのは「続けられること」と「存在価値を高めること」。言い換えれば「ブランドをつくること」だ。

金儲けのためだけに仕事をしているわけではない。誰かに何かを貢献したい。自分が生きている意味を見出したい。そういうことだってあるはず。自分なりの物語があるのか、それが大切。

大手ビール会社から中規模・小規模の地ビール・クラフトビール会社まで、同じライン上で売上を競っているわけではない。大手はシェア争いに意味をもたせざるを得ない面もあるだろうが、それでもそれぞれの存在する意味は、それぞれ胸の中で独自のものを持っているはず。持っていなければならない。

ガージェリーは、人々が生活の中で外飲みをする時間の価値、物性的には醸造所を出てから飲む瞬間までのコンディションということに軸足を置き、飲食店で働く人たちと手を携えて生きていきたい、そういう自分たちのストーリーをつくっていきたいということに意味を見出している。そういうブランドなのだ。だから、やることの優先順位ははっきりしている。


ただ、やるべきことをやっていたとしても、ブランドをつくるには時間がかかる。お客様やパートナーとの信頼関係が必要だから。腰をかがめて我慢する時間が必要だ。いたずらに量を求めてあれこれ背伸びをすると、ブランドではなく単なる"商品群"ができる。あとは前年比とのいたちごっこ。そうしてダメになった商品を数知れず見てきた。

ガージェリーが生まれて13年。まだ13年と言った方がいいだろう。

幸い、今のところガージェリーの状況は悪くない。しかし悪循環にはまる罠は知らない間に足元に忍び寄る。そういうことにならないように腰をしっかり落としておきたい。人類の長い歴史の中で、たまたま同じ時代、同じ時間を生きている愛すべき人たちと、ストーリーを共有しながら育てたい。そして、次の世代にがっちり手渡したい。

ガージェリーを。

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